2016年12月29日木曜日

[101] Tamas Laboratorium - Brain Machine


Label: Innovative Communication

Catalog#: IC 710.100
Format: CD, Album
Country: Germany
Released: 1990
DISCOGS

1 Gateway Of Life 31:07

2 Eternal Cristal 29:42
3 Space Distorion 10:32

ヘミシンク技術を開発した超心理学者Robert Monroe(ロバート・モンロー)の研究所の専門会員であったポーランド出身の物理学者Andrzej Slawinski(アンジェイ・スラヴィンスキー)が、その技術を応用し、自身で立ち上げたタマス研究所でプロデュース、独ディープホルツのレーベルInnovative Communicationから1990年に発表した第一作。
ヘミシンク=Hemi-Syncとは、ヘミスフェリック・シンクロナイゼーション(左右半脳の同調)を意味するモンロー研究所の造語で、左右の耳でそれぞれ波長がわずかに異なる音=バイノーラルビートを聞くことにより、右脳と左脳の脳波を同調させるオーディオ・ガイダンスのこと。元々は、1950年代に体外離脱(OBE)を体験したモンロー博士が、体験中に体内を微妙な振動が流れることに気づき、OBEへの誘導の可能性に着眼。脳波と身体の振動の関係性や脳に対する音の影響を研究し、1975年に特許を取得。リラックス・心身の健全化・睡眠・瞑想、その先にある至高体験へ、通常とは異なる意識状態へ誘導する技術として、現在まで心理学、精神医学、医療機関や教育機関で活用されているそうです。スラヴィンスキーは、ハイデルベルグ大学で物理学を専攻した後、照明技師・俳優として実験的な演劇活動を経て、生物物理学研究所でバイオフォトンや生体構造から発せられる光などの研究に従事。19200hz以上のオーディオストロボ信号=光信号を搭載した、視覚と連動する新しいサイコ・アコースティック技術の開発者として、ヨーロッパのスピリチュアル分野で絶大な評価を受ける存在とされています。
本作のタイトル「Brain Machine」は、おそらくニューロサイエンス(神経科学)における、脳神経と外部機器を接続する医工学技術=ブレインマシン・インターフェースから。収録された3トラックは、フラクタル幾何を生成するアルゴリズムのプログラムとMIDIシーケンサーで作曲され、無限に増殖し続ける複数のサウンドパターンが1トラック内で途切れなく連なり、時間とともにテクスチュアが変化していきます。#1-2は、ジャーマン・エレクトロニクスの系譜となるディープで宇宙的な曲。#3は、モダンクラシカルな鍵盤・打楽器風のアレンジ。いずれもヘッドホンでのリスニングを推奨していますが、#3の水が滴るように無作為に響いては消えてゆく、非反復・自動生成的な構造と静的なサウンドはピュアな環境音楽に近しい表情です。

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2016年12月25日日曜日

[100] Matt Christensen - Fund One Woman's Journey To The Women's March On Washington


Label: -

Catalog#: -
Format: Digital, Album
Country: US
Released: 2016
BUY

1 Women's March 7:00

2 Women's March 6:42
3 Women's March 6:52
4 Women's March 7:33
5 Women's March 9:54
6 Women's March 8:22

トランプ新政権が発足する2017年1月21日、女性の人権を尊重する政治を求めてワシントンDCで行われる「ウィメンズ・マーチ・オン・ワシントン」。その抗議行動に参加される、ひとりの18歳の女性の旅行資金を支援するファンディング・プロジェクトとして、シカゴのサイケデリック・バンドZelienople(ズィリノポ)のシンガー兼ギタリストMatt Christensen(マット・クリステンセン)が自身のバンドキャンプを通じてリリースした新作。止処なく刻まれるミニマルなリズムにトリッピーなエレクトロニクス、モクモクと煙ったい陶酔的グルーヴが立ち込める異境アフロ・フォーク。


Not everyone who should be in DC on January 21st can afford to be there. All proceeds from the sales of this record will go towards funding one 18 year old woman's trip to take part in the Women's March On Washington in Washington DC on January 21st, 2017. This woman has been recommended by a committee, and will remain anonymous. Downloads are $10, but please feel free to donate as much as you'd like! Note that this album will be deleted on Friday, January 20th.


about Women's March on Washington

The rhetoric of the past election cycle has insulted, demonized, and threatened many of us--immigrants of all statuses, Muslims and those of diverse religious faiths, people who identify as LGBTQIA, Native people, Black and Brown people, people with disabilities, survivors of sexual assault—that our communities are hurting and scared. We are confronted with the question of how to move forward in the face of national and international concern and fear. In the spirit of democracy and honoring the champions of human rights, dignity, and justice who have come before us, we join in diversity to show our presence in numbers too great to ignore. The Women’s March on Washington will send a bold message to our new administration on their first day in office, and to the world that women's rights are human rights. We stand together, recognizing that defending the most marginalized among us is defending all of us. We support the advocacy and resistance movements that reflect our multiple and intersecting identities. We call on all defenders of human rights to join us. This march is the first step towards unifying our communities, grounded in new relationships, to create change from the grassroots level up. We will not rest until women have parity and equity at all levels of leadership in society. We work peacefully while recognizing there is no true peace without justice and equity for all.

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2016年12月18日日曜日

[099] Владимир Леви & Ким Брейтбург - Млечный Сад


Label: Ritonis
Catalog#: SP02-0020
Format: Vinyl, LP, Album
Country: Latvia
Released: 1993
DISCOGS

А1 Смысл 4:12

А2 Отпускаю Тебя 5:14
А3 Волны Покоя 7:01
А4 Не Уходи, Дарящий 5:10
В1 Пробуждение 3:14
В2 Млечный Сад 4:36
В3 Солнечная Сторона Жизни 5:49
В4 Иду 3:06
В5 Сам Попробуй 5:14

70年代後期に結成、メロディアスなプログレッシヴ・サウンドとレーザーの視覚効果を使ったステージ演出で、ヨーロッパを中心に32カ国でツアーを行い、ソビエトを代表するロックバンドとして名声を得たDialogue(ダイアローグ)。そのグループのフロントマンで、現在まで映画・テレビ・ミュージカルのための作曲を手掛けているウクライナ・リヴィウ出身の作曲家Kim Breidburg(キム・ブレイトブルク)。Justinas Marcinkevičius(ユスティナス・マルツィンケヴィチュース)やAndrei Tarkovsky(アンドレイ・タルコフスキー)といった脚本家・詩人らに作詞を依頼し、音楽・文学・映画・舞台芸術の区分を超えたコラボレーションからDialogueの創造性を深めたBreidburgが、グループ解散前後の92年に、著名な心理学者Vladimir Levi(ヴラディミル・リヴィ)と共同制作し、音楽療法のためのレコードとして93年に発表したのが本作「ミルキーガーデン」。リリース元は、元国営出版機関Melodiya傘下でラトヴィア・リガを拠点とするレーベルRiTonis。レコーディングには、Kim Breitburgのシンセとヴォーカルのほか、Vladimir Leviの息子Maxim Levi(マキシム・リヴィ)がギターで、ダイアローグ・スタジオのエンジニアAndrei Usatii(アンドレイ・ウサティ)がベースで参加。 

ライナーノーツには、ヨーロッパで17-18世紀に作曲された「鎮痛」「解熱」「ストレスケア」のための医療音楽や、歌が精神を癒すと信じられていた古代の音楽療法、そして20世紀に再び花開いた「瞑想」「サイケデリック」「ニューロムジカ(神経に作用する音楽)」「催眠音楽」などの例が挙げられ、アルバムのAサイドを自己催眠や瞑想、睡眠、仕事後にリラックスタイムに、Bサイドは気分を向上させ、感覚を研ぎ澄ませ、エネルギーを補充し、意志を強化するために…という各サイドの趣旨と、1日数回のリスニングを1週間続け、2・3日休む、それを数ヶ月繰り返し継続する…という使用方法が記されています。ヒーリングを目的とした作品、とはいえ、ディープなメディテーティヴ・サウンドを期待すると拍子抜けするほどポップなメロディを高らかに歌い上げるオープニングから、潮騒とクラシカルギターに囁くようなリーディングを被せたA3、ツインピークスのサントラを思わせるB1、東洋的なムード漂うコスミック・ナンバーB2、さらには食料品売り場に流れていそうな軽快なインストB4まで。きらびやかなシンセのアレンジと打ち込みドラムによるイージーな曲調が並ぶなか、とりわけ同時期のインディ/ドリームポップへ通じるA4 "Do Not Go Away, Giver" の幻想的な美しさに耳を奪われます。この曲でKim Breitburgと共に歌っているMaria Breitburg(マリア・ブレイトブルク)は、おそらく彼の親類とみられる女性シンガーソングライターで、現在はロシアン・ポップスの作詞家として活動しているようです。

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2016年12月10日土曜日

[098] Planetary Peace - Synthesis


Label: Love All Day
Catalog#: LAD 011
Format: Cassette, Album
Country: US
Released: 2016
pre-order

1 Festival of Humanity 6:15

2 I Hear the Drums 1:17
3 Christ is Coming 4:41
4 Silence of Night 5:41
5 Step High 3:44
6 Country of Love 8:24
7 Medicine Wheel 3:39
8 I Am That I Am 6:38
9 Gentle People 6:27
10 Song without Warning 2:13
11 Shepherd's Song 2:25
12 Haré Om 6:00
13 Highland Memories 3:36
14 For Four 2:28
15 I Am Om 10:11
16 The Call 1:15
17 Mountain Horns 7:06
18 Feel the Spirit 2:17
19 Wave Motion 4:30
20 Hear the Om 3:53

Will Sawyer(ウィル・ソウヤー)とKalima Sawyer(カリマ・ソウヤー)のアメリカ人夫妻によるデュオ・ユニットPlanetary Peace(プラネタリー・ピース)が、ロンドンに移住していた80年代初頭に録音を開始、83年にサンタフェに戻り自主リリースした、知られざるシンセフォーク作品「Synthesis」を、シカゴのレーベルLove All Dayがリマスター再発。一部のアコースティック楽器を除き、すべて純正律にチューニングしたSerge製モジュラー・シンセサイザー2台を使って演奏された、心の平安、人々の慈愛、自然の偉大さを讃える20曲のオリジナル・マントラ。当時、ディストリビューションの協力と寄付を募り、友人や仕事仲間に無料で配り歩いていたそうです。夫妻の消息をつかんだレーベルによると、現在2人はマウイ島でオーガニックファームを経営しながら、自分たちで作った太陽光発電スタジオで録音を続けているとのこと。カセットテープとデジタル版で12月20日にリリース。


「1980年の秋、ロンドンにある自宅のリビングルームで、TEACのリールトゥリール・テープ・デッキを使って録音しました。81年3月に初めての子供が生まれる前にこの録音をしようと決め、全ての機器を持って私たちはロンドンに到着しました。恵みや幸運に巡りあい、ロンドン中心部のハムステッド・ヒース近くにある小さなコテージを見つけました。そこは夕方録音するのに十分なほど静かでした。平均律より純正律を好んでいたため、私たちは自分たちでチューニングできる機材を探しました。その目的にあったアナログシンセサイザーのキットを開発したエンジニアSerge Tcherepnin(サージ・チェレプニン)がサンフランシスコにいました。私たちはロンドンに出発前、数ヶ月の間苦労してキットを組み立て、ハンダ付けし、演奏する方法を学びました。信号経路を手動で設定し、オシレーターやフィルターなどに接続するためのパッチケーブルが必要でした。もちろん今はすべてデジタルで行われます…… TEACのリールトゥリール・テープ・デッキ、Shureのマイク、リバーブなど、すべて自分たちで持ち込んだ機材を使いました。おかしかった出来事といえば、私たちがサンフランシスコを出発する際、飛行機の乗客全員が離れたターマックに移動させられ、全ての荷物がチェックされました。そのため、離陸まで数時間の遅れが生じました。彼らは爆弾の恐れがあると話していましたが、私たちのシンセサイザーが原因でアラートを引き起こしたかもしれないと、しばらくして思いました。「テロリスト」というものがつくり出される前だったので、当時はだれもそんな理由を考えませんでした。私たちの娘が生まれてからは、私たちは多かれ少なかれ、すべての音楽制作を止めました。私たちが配り歩いていた非常にレアなカセットの1つにあなたが出会ったことは、実に小さな奇跡です。」 


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2016年12月8日木曜日

[097] Suso Sáiz & Gigi Masin live at Casa Bonay






アムステルダムのレーベルMusic From Memoryと、オンラインラジオ局Red Light Radioの配信による共同主催で、11月19日にバルセロナのホテルCasa Bonayにて行われたMFMのショーケース・イベントの録音アーカイヴ。ライブアクトはSuso Sáiz(スーソ・サイス)とGigi Masin(ジジ・マシン)。DJはレーベル主宰のTakoとJamie Tiller(ジェイミー・ティラー)、RLRのOrpheu The Wizard(オーフィア・ザ・ウィザード)。スペインの電子音楽とポストパンクの交点から民俗的でアトモスフェリックな音響の新生面を切り開き、現在はプロデューサーとしてインディロック・シーンを支えている57年生まれのSuso Sáiz。片や、元はラジオDJで、故郷ヴェネツィアを拠点に、フォーキー気質のソングライティングにシンセを織り交ぜたメランコリックな音楽性で、インディペンデントな作曲活動を続けてきた55年生まれのGigi Masin。アンビエントという共通項で結ばれるとはいえ、おそらくMFMという接点がなければ共演することはなかっただろう2人のマエストロ。ライブはソロセットで、共にそれぞれの演奏のラストに参加しあい、音を交えています。



Music From Memory & Red Light Radio at Casa Bonay
live movies on RLR facebook page
Suso Sáiz / Gigi Masin

Red Light Radio
radio station & international music platform based in Amsterdam


2016年12月6日火曜日

[096] Malcolm McLaren And The Bootzilla Orchestra - Call A Wave


Label: Epic

Catalog#: WALTZ T5
Format: Vinyl, 12", Promo
Country: UK
Released: 1989
DISCOGS

A Call A Wave (DFC Dance Mix) 7:44

B Call A Wave (Breakdown Mix) 6:13
C Call A Wave (Orbital Mix) 6:05
D1 Call A Wave (Return To The Deep Ambient Mix) 4:38
D2 Call A Wave (New Age Mix) 3:39

Sex Pistolsの仕掛人として世界的に知られ、80年代以降はプロデューサー兼コンポーザーとして、ヒップホップやエレクトロといったダンス・ミュージックと、オペラやワールド・ミュージック的エッセンスを独自にクロスオーバーさせた鬼才Malcolm McLaren(マルコム・マクラーレン)。PファンクのベーシストBootsy Collins、イギリスのロック・ギタリストJeff Beckらをゲストに迎え、クラシックのサンプリングとハウス・ミュージックを大胆に融合した89年発表のアルバム「Waltz Darling」から
5枚目のシングル曲で、オリジナルではゆったりとしたドラムビートとパーカッション、ピアノやシンセ・ストリングスに、Jeff Beckのギターソロ、海への回帰を歌う女性のリーディングをフィーチャーした "Call A Wave" を、アンビエント・ハウスにリミックスしたプロモ盤。リミキサーはイタリアのレーベルDFCから、同年「E2-E4」をヒットさせたSueño Latino(スエーノ・ラティーノ)のメンバーMassimino Lippoli(マシミーノ・リポリ)。イギリスの名プロデューサーWilliam Orbit(ウィリアム・オービット)とMark Moore(マーク・ムーア)のコンビ。


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2016年11月28日月曜日

[095] Robert Aiki Aubrey Lowe - Thought Withdrawal


Label: Land and Sea
Catalog#: #29
Format: Vinyl, LP, Album
Country: US
Released: 2016
DISCOGS

1 Stage 1 14:02

2 Stage 3 2:28
3 Stage 2 12:46
4 Stage 4 9:30
listen sample

"Thought Withdrawal" is a time based installation meant to serve as a Form Constant/Hypnagogic interpretation through video and sound synthesis. While the video installation was built before arriving at the gallery, the sound installation was generated on site. the notion of creating a site specific work was key in the investigation of the relationship of space to the visual/auditory work. On February 20th, 2016 LAND AND SEA had the pleasure of hosting Robert at our project space in Oakland California. The gallery hours leading up to Robert’s live performance were serene and meditative. A patch was created on his modular synthesizer that accompany a looped video projection comprised of synthesized, lush, amorphic color blobs and blends easing in and out from one another. Time and perception shifted. The live performance was stunning, and inspired us to make this record. The sound piece in several parts, is meant to interact with the video installation in an intuitive way. as there is no hard sync between the two components, yet there exists an illusion of firm synchronicity between them. the sound also provides an illusion of acoustic instrumentation, yet it is only a series of voltages moved and manipulated to induce another illusory element.

Robert Aiki Aubrey Lowe (b. 1975) is an artist and composer that works with voice in the realm of spontaneous music often under the moniker of Lichens. Most recently, creating patch pieces with modular synthesizer and tonal vocal work has been a focus of live performance and recordings. The marriage of synthesis and the voice has allowed for a heightened physicality in the way of ecstatic music, both in a live setting and recorded. The sensitivity of analogue modular systems echoes the organic nature of vocal expression which in this case is meant to put forth a trancelike state. Through collaboration Robert has worked with Ben Russell, Ben Rivers, Sabrina Ratté, Rose Lazar, Nicolas Becker, Jóhann Jóhannsson, Tarek Atoui, Philippe Parreno, Evan Calder Williams, Ariel Kalma, Lucky Dragons, Alexandra Wolkowicz, Biba Bell, ADULT, Doug Aitken, and Rose Kallal, as well as many others.

2016年11月26日土曜日

[094] Leo Svirsky - Heights in Depths


Label: Catch Wave Ltd.
Catalog#: CW 002
Format: Vinyl, LP, Album
Country: US
Released: 2016
DISCOGS  BUY


A Heights in Depths 17:36

B Depths in Heights 18:21


米ワシントンDC出身、現在はオランダのデン・ハーグを拠点に活動している作曲家/インプロヴァイザーLeo Svirsky(レオ・スヴァルスキ)。ピアノと歌による「Songs In The Key Of Survival」に続き、ソロ2作目として発表されたアコーディオンの独奏。A面 "Heights in Depths" は、一方向に真っすぐ伸びる高音域のロングトーンを基調に、複雑なうなりと倍音の変化、不安定なモアレ縞を浮き上がらせる、きわめてミニマルな演奏。B面 "Depths in Heights" は、和声・奏法・呼吸の抑揚とも比較的起伏のある構成で、中音域の粗い質感と後半にかけて色味を増してゆくコードの推移が特に美しいです。両サイドとも骨組みとなる作曲に基づきながら、テクスチュアの変化が即時的に引き起こされ、緊張と弛緩、麻痺と覚醒、鎮静と高揚という相反するものの揺らぎの中に身を潜めるように、均衡を保ちつつ密やかに進行しています。レコーディングは今年3月27日の復活祭、アムステルダムのアートギャラリーW139にて。インナースリーヴには歴史学者Norman Cohn(ノーマン・コーン)によるテキスト「The Pursuit of the Millennium(千年王国の追求)」の抜粋が、レーベル・サイトにその一節「To descend from the oneness or Eternity, into the multiplicity, is to lose ourselves in an endlesse Labyrinth.(同一性または永遠性から多様性へと降下することは、終わりなき迷宮で自分自身を失うことである)」が記されており、おそらく宗教思想における「永続性・循環性・普遍性」と「響き・知覚」との関係性に着眼した作品とみてとれます。リリース元はブルックリンを拠点に今年新たに立ち上げられたレーベルCatch Wave。オーナーのBritton Powell(ブリトン・パウェル)は、東海岸のエモ/インディロック・シーンでのバンド活動を経て、現在はソロ名義で、ミニマリズム/実験音楽に接近した作曲・演奏活動を行っている作曲家兼ベーシスト。レーベルの最初のリリースとなった本作のカタログ番号は2番で、1番はブリュッセルの作曲家Dominique Lawalrée(ドミニク・ラワルレ)の初期作品の編集盤、3番にはミュンヘンの前衛民族音楽集団BetweenのギタリストRoberto Détrée(ロベルト・デトレ)のソロ作のリイシューがアナウンスされています。


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[upcoming]

Dominique Lawalrée - First Meeting [CW001]
selections from early 1970's-80's records

Roberto Détrée - Architectura Celestis [CW003]
originally released on Wergo Spectrum in 1982

2016年11月22日火曜日

[093] Mark Fell - Focal Music


Label: The Tapeworm

Catalog#: TTW 89
Format: Cassette
Country: UK
Released: 2016
DISCOGS  BUY

A1 Focal Music #4 with Aby Vulliamy, Viola, Leeds 2015 11:14

A2 Focal Music #3 with Laura Cannell, Overbowed Violin, Newcastle 2015 20:41
B1 Focal Music #5a with Sandro Mussida, Piano, Karlsruhe 2016 15:32
B2 Focal Music #5b with Sandro Mussida, Piano, Karlsruhe 2016 15:20

“The series of works on this cassette began in 2011 when I attended a workshop/residency programme led by the British sound artist, composer and performer Jan Hendrickse. During a workshop session I played a pattern generating system via headphones to a drummer, Patrik Jarlestam, who played a single snare drum. The basic premise of the work was that the performer should follow the pattern as accurately as possible, and to see what happened at the moments when the pattern changed – i.e. to foreground the performers attempts to follow the pattern and their ability to cope with the subtle yet unusual changes. 
The pattern itself consists of a single percussive sound. The timing of the sound is determined by a list of five values ranging from one to 11 that represent timing intervals. These values are stepped through one at a time and multiplied by a base value, typically 80 milliseconds, to give the following possible timing intervals: 80, 160, 240, 320, 400, 480, 560, 640, 720, 800 and 880 milliseconds. A typical pattern might consist of something like 240, 240, 480, 320 and 320 which makes a total loop length of 1.6 seconds. If a single value is changed, for example element one becomes 560, the overall loop length extends to 1.92 seconds. 
Although the patterns are relatively simple, and as a listener one can assimilate their form quite easily, it can be quite difficult to play along to them especially at those moments of change. So the piece can be thought of as a kind of intervention into the musical training and embedded musical vocabularies that the performer brings to the work. The point of the piece is not a perfect recital, but the difficulties that the performer encounters and the musical moments that these difficulties produce. 
Unfortunately I believe there is no recording of Jarlestam’s first performance of this piece – “Focal Music #1”. The piece was performed a second time by Okkyung Lee during her residency at Café Oto, London 2015. “Focal Music #3” was performed with Laura Cannell at Baltic 39 (Newcastle, 2015) for Broken Telephone, an event which formed part of Peter J. Evans’ exhibition Across Islands, Divides. “Focal Music #4” was performed with Aby Vulliamy at The Leeds Library (Leeds, 2015) at Peter Gidal/Mark Fell: Film/Sound organised by Pavilion and curated by Will Rose. “Focal Music #5a” and “Focal Music #5b” were recorded with Sandro Mussida at Zentrum für Kunst und Medientechnologie (Karlsruhe, 2016) in the Kubus studio. The piece, performed on piano, takes two forms: the first based upon a six note pitch set of which any two notes are played at the same time; the second is formed of 5 discreet layers each with a single note. These were played in isolation following the same guide pattern and then later overlaid to form a single pseudo chord.” - Mark Fell, South Yorkshire, 4th May 2016

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2016年11月19日土曜日

[092] Alex Albrecht - Leisure Link Mix


モジュラーシンセやフィールド・レコーディング音源を効果的に使い、ある場所の空気感やストーリー的情趣を喚起させるディープなテックハウス作品を、自身で主宰するAnalogue Attic Recordingsから発表しているメルボルンのデュオ・プロジェクトAlbrecht La'Brooy(アルブレヒト・ラブロイ)。このデュオの片割れで、ピアニストのAlex Albrecht(アレックス・アルブレヒト)が、メルボルンのコミュニティラジオTriple Rの音楽プログラム「Leisure Link」に提供、10月25日の夜に放送された1時間のミックス。ニューエイジ、クリック/ミニマル、ダウンテンポからコンテンポラリー・ジャズまで、彼らの志向と影響源が垣間見える、渋い趣のあるアンビエント・セレクション。26:30-38:55-の2曲はAlbrecht La'Brooyの未発表音源で、特に2曲目は、2人がシンパシーを示しているJonny Nashのソロ作に通じる静謐でメランコリックなサウンドが素晴らしいです。



Leisure Link
hosted by Didvid.S
3RRR - Triple R 102.7 FM Melbourne
www.rrr.org.au

[related]

2016年11月18日金曜日

[091] va Boredom Is Deep And Mysterious


Label: April Records
Catalog#: APR 001CD
Format: CD, Compilation
Country: Denmark
Released: 1994
DISCOGS

1 Dub Tractor - See Trough Cabins 7:07

2 Dub Tractor - P-Phase S.T. 6:20
3 Acustic - Dimension 4:34
4 Acustic - Coral 6:46
5 Recycler 202 - Recycler 202 9:11
6 Double Muffled Dolphin - Alphapulse 10:20
7 Double Muffled Dolphin - Betaspin 8:39
8 Opiate - John Lilly In Loop 6:04
9 Opiate - L.Ö.L. 10:51
10 D.A.W.N. - Dawn 4:08

90-00年代にかけてデンマークのエレクトロニック・ミュージック・シーンを先導する
コペンハーゲンのレーベルApril Recordsが、94年に初タイトルとしてリリースした「Boredom Is Deep And Mysterious」シリーズの第1弾。80年代からインディポップ・グループHow Do Iのドラマーとして活動したDub Tractor (ダブ・トラクター)ことAnders Remmerは、「Delay」の原型となるレイドバックしたエレクトロニック・ダブ。同じくHow Do Iでキーボードを担当していたPeter Fjeldbergによるソロ名義Double Muffled Dolphin(ダブル・マッフルド・ドルフィン)は、本作の中では異彩を放つシンセティックなディープ・アンビエント。「Objects For An Ideal Home」やAlva Notoの共作など、後のシーンの代表格として名を馳せるOpiate(オピエイト)ことThomas Knakは、ノイズやエフェクトとブレイクビーツを交ぜたフリー
フォームで実験的なトラック。深海に響くソナーを思わせるエフェクトを使った#8は、アンビエント期らしいJohn C. Lillyがモチーフになっています。RemmerとのデュオRecycler 202、Knakを加えたトリオD.A.W.N.の一員でもある、Jesper Skaaningによるソロ名義Acustic(アコースティック)は、温かい水の中をフワフワと漂うような、深遠で神秘的な退屈音楽を体現する音数の少ないIDMレイヴ以降の新しいエレクトロニック・ミュージックの潮流に呼応しつつも、ダンス・オリエンテッドでなければインテリジェンスでもない。ひたすら心地よい長閑さと無邪気さ、ナードな内向性を感じさせるFuture 3組による三者三様のベッドルーム・サウンド。人懐こいラップトップ・エレクトロニカのフォームを確立してゆく彼らの初期形態として興味深いコンピレーションです。


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[related]

Acustic ‎– No 2 (April Records, 1997)

Opiate ‎– 1/3 & 1/2 EP (April Records, 1997)

2016年11月10日木曜日

[090] Dominique Lawalrée - L'espace D'un Instant


Label: Editions Walrus

Catalog#: MT 101
Format: CD, Album
Country: Belgium
Released: 1989
DISCOGS

1 Petite Ouverture / Brief Overture 1:38

2 Marine 5:35
3 Rivages / Shores 3:27
4 L'ombre Des Couleurs / The Shadow Of Colours 4:27
5 From The Gardens...And From The Lakes 8:13
6 It's Christmas Time Again 3:00
7 Les Eaux Dormantes / Sleeping Waters 4:15
8 Harpsinotes 4:52
9 Bulles De Reve / Dream Bubbles 3:55
10 Voices 8:58
11 Deuxieme Chanson Sans Paroles / Second Song Without Words 1:25
12 Le Jardin Des Oliviers / The Olive Grove 12:32
13 L'espace D'un Instant / Each Passing Moment 1:38
14 Menhir 3:12
15 Ainsi S'en Va Le Temps Qui Fut / Thus Passes The Time That Was 5:45

11枚のアルバム後に発表された、Dominique Lawalréeの初めてのCD作品。「ようやく」と言いたい。デジタルサウンドで記録されることで、彼の全ての音楽を特徴づける静寂と沈黙をよいコンディションで聴くことができる。シンセサイザーのための60を超える中から選ばれたこれらの楽曲は、ピアノやオルガン、オーケストラ、室内楽、声楽のアレンジと並行して、84年から89年までの間に作曲された。彼のシンセサイザー作品は、このアルバムで初めて披露される。Lawalréeのアプローチは、クラシック音楽のトレーニングから確かに影響を受けており、特別にシンセサイザーを使った今作でも聴くことができる。彼はそれぞれの作品をパーソナライズするために、1つの作品に対し1つの楽器を使用することで、技法やテクノロジーのスパイラルに陥ることを避けている。それは彼の音楽のもつ性格を忠実に支えている。音楽で勝負を争うような技巧的基準の全てが排除され、リスナーの心に直接響く音楽の詩性を、新しい観点から啓発している。彼の音楽を「ミニマル」と考えるなら、それはサン・マルコ修道院にあるフラ・アンジェリコのフレスコ画の様式に通じるだろう。マテリアルの簡素化による無垢の探求と、パターンの繰り返しによる目的の拡大。必要に応じて、コンポジションにほとんど影響を与えないように楽器は置き換えられ、その多様性は音にリンクする(特に、構造と発想の点で頻繁に欠点が示されるシンセサイザー音楽の分野では)。トーナルまたはモーダルなハーモニーはロックの影響を通過したものだが、独自の語法とシンプルで真っすぐな態度によって、彼はまさにアカデミックな前衛音楽作曲家から遠く離れた宇宙にいる。新たな人間によって生成されない限り、音楽は刷新されないと彼は考える。これは、シンセサイザーやリズムボックスの技術的な手軽さを拒否する理由であり、シーケンサーの使用も最小限に抑えられている(グレートブリテンの湖に感化された "From the Gardens... and from the Lakes" で例外的に使用されている)。このように全ての楽曲は演奏され、直接レコーディングされた。スコアよりもコンサートやレコードを多く発表するロック・ミュージシャンの在り方に影響を受けていることは、彼がシリアス・ミュージック界の象牙の塔(芸術至上主義の閉鎖社会)のノウハウの影に隠れずにいる理由でもある。この信念に基づき、彼は自身の音楽宇宙と忘れられない時間を、より深く、ありのまま聴いてもらうために、理解のある控えめな観客を招いてプライベート・コンサートを行っている。精神的に強く、熱心に、宣伝の仕方に一切の妥協をせず、音楽が遠く広がりすぎないように注意深く見守っている。その目立たない性格を保つために。逆説的に言えば、彼の望む音楽的発展を意味し、世界中で演奏され、聴かれることへの願いでもあるだろう。 - Michel Waesmans


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[related]

Jardins Secrets (Music Today, 1992)

Arches (Music Today, 1994)

2016年11月4日金曜日

[089] va Yugoslavian Space Program


Label: Discom
Catalog#: DCM-003
Format: Vinyl, LP, Compilation
Country: Germany
Released: 2016
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A1 Miha Kralj - Robot 5:10

A2 Miha Kralj - Juh-Hu 3:51
A3 Oskarova Fobija - Izmedju Dve Kapi Znoja 4:37
A4 Oskarova Fobija - Mayan Spacecraft 4:56
B1 Beograd - Eenterstellar 5:06
B2 Beograd - Mozak Primopredajnik 4:52
B3 Digitron - Digital Minds 4:42
B4 Digitron - Kosmos 5:20

Luka Novaković(ルカ・ノヴァコヴィッチ)とVanja Todorović(ヴァンニャ・トドロヴィッチ)の2人によって昨年立ち上げられた、セルビア・ベオグラード拠点のレーベルDiscom。旧ユーゴスラビア圏の知られざる音楽の発掘・プロモーションを目的とするこのレーベルの第3弾タイトルとして、4組のシンセシスト/コンポーザー/グループに焦点をあてたエレクトロニック・スペース・ミュージックの編集盤が11月末にリリース。


「Yugoslavian Space Program」は、過去にユーゴスラビアでつくられたエレクトロニック・スペース・ミュージックをテーマとする初のコンピレーション。レコードレーベルDiscomは、1981年から2015年までの期間を対象に、ヨーロッパの一部であるこの地域から生まれた知られざるエレクトロニック・ミュージックのリサーチに長期的に力を注いできた。その結果、既にレコード・コレクターやDJによって高く評価されているユーゴスラビアのアーティスト達の協力を得て、このコンピレーションが実現した。アルバムは、スロヴェニアにおけるシンセのパイオニアMiha Kralj(ミハ・クラリ)による2つのトラックで幕を開ける。"Robot" は非常にオブスキュアな実験的エレクトロニカ。"Juh-Hu" は最近発見されたスペース・ミュージックの逸品。スロベニアのバンドOskarova Fobija(オスカロヴァ・フォビア)による2曲は、これまで未発表であったが驚くほど素晴らしい。"Izmedju Dve Kapi Znoja" は浮遊感のある80年代のシンセ・スペース・ソング。"Mayan Spacecraft" はAKAIの尺八のパッチを特色としたダンシーなインストゥルメンタル・ナンバー。Bサイドでは、「ベルリン・スクール」と呼ばれるドイツの電子音楽からの影響を紹介する。はじめは、伝説的グループBeograd(ベオグラド)。"Eenterstallar" はKlaus Schulzeに似たサイケデリックで瞑想的なナンバー。"Mozak Primopredajnik" はTangerine Dreamなど70年代のクラウトロックの巨匠を連想させる。そして、このコンピレーションのハイライトが、Zoran JevticとAndre Koyによって結成されたセルビアとクロアチアのグループDigitron(ディギトロン)。彼らが傾倒するKraftwerkに近いスタイルだが、独自の優れたシンセ・サウンドを作り上げている。“Digital Minds” は未来社会のパーフェクトなディストピア・ビジョン。同様に衝撃的な “Kosmos” では、多くのKraftwerkの曲と類似する、ソヴィエトの技術や文化から受けたインスピレーションが描かれている。ここでフィーチャーされた音源の大きな特徴は、商用サンプルやドラムループを全面的に使用せず、全てのサウンドとパッチが合成され、手動でプログラムされたという事実にある。加えて、選曲からサウンドデザイン、かつての時代のメッセージとシンボルを踏まえたアートワークまで一環したコンセプトのもと、コンピレーションは慎重に考案された。レコードのカバーは、ユーゴスラビアの科学者で宇宙航行学のパイオニアによるスケッチ。時代に先駆けたアイデアであり、この宇宙船と天体は共産主義時代の彫刻・モニュメント建造物として見ることができる。ユーゴスラビアのエレクトロニック・スペース・ミュージックをより広い文脈で提示することを目的としているが、ユーゴスラビアで生まれ育った彼ら世代の理知と大志は、このリリースでは決して捕えらることができないほどさらに大きな産物のもたらした。この国は既に存在せず、再びこの種の音楽を創造することは不可能であるという事実は、今日これらレコードをさらに重要なものにしている。


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[related] Discom presents Yugoslavian Space Programme in NM show at Resonance FM London, UK


2016年11月3日木曜日

[088] Continuo’s Documents - Selection from the Vault


Label: Continuo

Catalog#: -
Format: Digital, Mix, Cassette (unreleased)
Country: France
Released: 2016

A

01 Alfred Rattera - untitled (1970s)
02 Etienne O’Leary - Globe Sonore podcast (2012)
03 Marina Abramovic & Ulay - GyütoMahakala (1985)
04 The Kipper Kids - The Sheik of Araby (1983)
05 BIOME - Tactus Tempus (1969)
06 Gerald Bisinger - Gesprache Gesprache Gesprache
07 Isao Tomita - Bird Chorus (1985)
08 Abing - Erquan Yingyue (Reflection of the Moon) 1950
09 Tony Ousler - Sphères d’influence (1985)
10 Carol Parkinson - Technology is a Medium, 1984
11 The Implicit Order - Looker (If Looks Could Kill)      
B
12 Riri Shimada - Sea of Memories
13 Norman Andersen - Playing By Ear (1986)
14 Joseph Ceravolo - reading Funny Day
15 Ivana Stefanovic - The Epistle of Birds, 1976
16 Slave Pianos - Untitled (composed by Anthony Clark, 1981)
17 Altagor - various excerpts
18 VPRO - Air Raid (1983)
19 Bill and Mary Buchen - Wind Antenna (loop), 1982
20 Braco Dimitrijevic - This world must not be composed of masterpieces (1993)
21 Marcell Jankovics & István Vajda - Fehérlófia OST (1981)
22 Kyn-Tanya - …IU IIIUUU IU… (1924)
23 Andrew Hugill - Nicholas Through the Mist (2006)
listen

90年代のアートスクール時代に4本のデモアルバムを制作して以来、23年振りとなる音響作品「Musique Isotype」をEntr’acteからリリースしたパリ在住の作家Laurent Fairon(ロホン・フェホン)。文芸雑誌「Le Reflet」のディレクターを務めた後、2007年から音楽ブログContinuo’s Weblogを開設。レコードコレクターである彼自身のコレクションから、電子音楽やムジーク・コンクレート、ラジオアート、音響詩、フルクサス、初期のサウンドアートや音響彫刻、サウンドスケープ作品から、ウィアードなジャズやフォーク、ライブラリーに及ぶ、珍しいヴァイナルやカセットの数々を紹介し、また、ウィキペディアやユビュウェブでは、カセットマガジンや前衛音楽作曲家に関する文書や音声資料のアーカイブに寄与。当時は実名を伏せて活動されていましたが、彼の「コンティヌオ」または「テルス・アーキビスト」というユーザー名は、特にインターネット上を徘徊する実験音楽ファンや風変わりな音楽を愛する人々の間で知られ
ていたと思います。

この「Selection from the Vault」は、Faironがブログで取り上げてきたオブスキュアなレコードや音声記録に基づくコンピレーション・プロジェクトとして依頼を受け、2015年に制作。しかし実現せずにお蔵入りとなっていたものを、今年9月に現在のブログ(2011年にタンブラーに移設)Continuo’s Documentsにて公開されたミックス作品。映画の音声、ウェブサイトのサンプル、インターネットアーカイブ、希少なアーティスト・エディションなどから2-3分ずつ抽出した各面30分。元々はカセットで計画されていたとみられ、Jカード比率のカバーアートが使われています。トラック毎の作曲者と引用元について詳しく書かれたライナーノーツとダウンロードリンクはこちらから。

"Early in 2015, I was asked to work on a compilation project based on rare tracks and other obscure audio documents from this Tumblog. I decided to use short excerpts – around 2–3 minutes – and to include a variety of genres covered by the blog, namely sound art, sound poetry, obscure film music, artist releases, rare electronics, etc. The cassette was never released, but I thought I’d share it with readers as I believe it is a pleasant listen. The download link comes as two 30-mn tracks and detailed liner notes."

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Laurent Fairon - Musique Isotype (Entr’acte, 2016)

Continuo - Guest Mix (Sep. 2016)
アムステルダムのレーベルLullabies for Insomniacsへのゲストミックス

[interview]

Hyperallergic: A Chronicler of Experimental Music Releases His Own
by Joseph Nechvatal

2016年11月1日火曜日

[087.1] oct

10月のリスニングから
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Red Light Radio: Melody As Truth
アムステルダムのオンラインラジオRed Light Radioで10月8日に放送された、ロンドンのレーベルMelody As Truth特集。レーベルを主宰するJonny Nash(ジョニー・ナッシュ)と、現在アムステルダムを拠点に活動しているSuzanne Kraft(スザンヌ・クラフト)aka Diegoによる、これからリリースされるスプリット「Cristina & Carolina / Roberto & Giovanni」とアルバム「What You Get For Being Young」の収録曲と2人の未発表曲を含む2時間のプログラム。最高のアンビエント・セレクション。

Robert Lippok - Open Close Open (raum, 2016)
listen Close
Brian Enoも賛美するブルックリンのシンガーソングライター作品から、台湾の室内楽アンサンブル、サンパウロのピアニストによる自然との交感、そして北欧でつくられたヴィンテージ・レコードのコラージュへと、絶妙なリリースが続いているflau。昨年12インチ専門のサブレーベルとして立ち上げられたraumの最新タイトルは、ベルリン出身の電子音楽家Robert Lippok(ロバート・リッポック)の2001年作のリマスター再発。クリアスリーブとクリアヴァイナル、ラベルに印されたグリーンのドットは、Raster-NotonによるオリジナルCDの意匠が反映されている。設立時はエレクトロニカの系譜を継いでいたこのレーベルが刺激を受けていただろう00年代ミニマリズムのクラシックを、ポストクラシカル、ビートミュージック、南米音楽といった広範囲の現行シーンとよい距離感でリンクするキュレーター的存在へと飛躍したflauが、今このタイミングで取り上げたのが新鮮で、そこに新しい機運を感じた。

va Maizena Boys (No Hands, 2016)
11名のDJ兼プロデューサーからなるコレクティヴRoussakis(ロウサキス)やHelp Recordings、2 Bit Crewを中心とする、オーフスの地下ハウスシーンから生まれた新レーベルNo Hands。その第1弾タイトルとしてリリースされた、4名のクルーMaizena Boys(マイジーナ・ボーイズ)によるコンピレーション。DJ Sports(Milán Zaks) は兄のCentral(Natal Zaks)とHelp Recordingsを主宰するコア・プロデューサーの1人。Manmade Deejay(Mathias Okholm)はRoussakisのA&R。2 Bit Crewの片割れC.K(Christoffer Kejlstrup)は、ザックス兄弟と共にNo Handsの運営に関わっていて、サウンドクラウドのSafe Radioを担当している。Paltaはおそらくザックス兄Centralの別名儀。人物とレーベルの相関が複雑で判然としないが、SAFE Distributionの名の下で包括的に流通とブッキングを管理しているようだ。ノンビートのアトモスフェリックなトラック "Improvise In Order" や、Carl Stone "Wall Me Do" を思わせるレフトフィールド・トラック "Fingerdansen" が印象的で、自分にとってはbblisss」と同じように、クラブ・ミュージックの(古くて新しい)アンビエントな空気や動向を知った一枚。

DJ Sports - Phases Of Winds (Yield, 2016)
21か22の若さながら、既に複数のプロジェクトと変名を使って数多くの作品をプロデュースしているDJ Sports aka Milán Zaks(ミラン・ザックス)。アムステルダムに拠点を置くレーベルYieldから8月にリリースされた「Phases Of Winds」は、アンビエントなシンセパッドとジャングル、ダブの要素が入り交じるリスニング〜レフトフィールド志向のソロアルバム。Yieldは椅子の写真で統一されたカセットとデジタル、スウェットシャツで展開していて、本作ではDJ Sports本人が撮影した写真が使われている。

No-Man - Heaven Taste (Sähkö Recordings, 2016)
Alessandro Monti/unfolkが、7月にサウンドクラウドでRichard Barbieri & Tim Bowness(リチャード・バルビエリ&ティム・ボウネス)の "Brightest Blue" という美しい曲をリポストしていた。Montiが80年代に活動していたWind Pjt.を思うと、JapanやTalk Talkと連なるUKアートロック系譜のメランコリックなサウンドにシンパシーを感じていたとしても自然なことだと思った。それからTim Bownessのソロや、Steve Wilson(スティーヴ・ウィルソン)とのプロジェクトNo-Manのことを考えていた時に、目に留まったのがこの12インチシングル。元は1993年の「Painting Paradise EP」に21分のロングバージョンが収録された曲で、今回のリイシューでは、Steven Wilsonによる11分のエディットと、フィンランドのベテラン・プロデューサーJimi Tenor(ジミ・テナー)によるリミックスが収録されている。この曲がMixmaster Morrisのクラシックだということも初めて知ったが、それよりも実験的な音響テクノのレーベルとして認識していたSähköから、バレアリック〜アンビエント・ハウスの作品がリリースされたことが少し驚きだった。

2016年10月29日土曜日

[087] Gianni Gebbia - Gianni Gebbia


Label: Sound Event

Catalog#: SE 001
Format: Vinyl, LP, Album
Country: Italy
Released: 1987
DISCOGS  BUY

A1 Osso Di Seppia 4:54

A2 Ipnogatto 2:35
A3 Le Cou Oblique 4:26
A4 Danza Contrariusa 4:22
A5 Cud 3:29
B1 Song For My Wife 3:05
B2 Zabare 7:03
B3 Vedersi Passare Le Cose Attorno 4:53
B4 I Due Samurai 3:12

フリー・インプロヴィゼーション第二世代の最も優れた才能の1人と評されるパフォーマー。そして、演奏活動に留まらずインスタレーション・絵画・映画制作に及ぶ芸術表現と、活元運動・弓道・禅といった東洋哲学・精神性の研究の双方に取り組み、臨済宗の信徒として常楽(Joraku)という戒名を持つ、シチリア島パレルモ出身のサックス奏者Gianni Gebbia(ジャンニ・ジェッビア)。70年代に独学でジャズを学び、80年代初頭にNYノーウェイヴ/ロフトシーンに刺激を受け、80年代中頃からソロ活動を開始。サルディーニャ島のラウネッダス奏者Dionigi Burranca(ディオニージ・ブランカ)から教えを受けた循環呼吸法とマルチフォニック奏法を使い、ジャズの歴史をカバーするワイドレンジな演奏スタイルで、現在まで様々な演奏家と音を交えているGebbiaが、自身のソロ・パフォーマンスを模索していた頃、87年に録音された初のソロアルバムが本作。A3とB1に打楽器奏者Sergio 'Guna' Cammalleri(セルジオ・カマレリ)、B1には長年のコラボレーターでもあるピアニストDiego Spitaleri(ディエゴ・スピタレリ)が作曲とシンセで客演しているほか、基本はGebbia自身のサックス(ソプラニーノ、アルト、バリトン)またはシンセサイザーの持続音やミニマルなリフの上に、即興的なフレーズやメロディパートを重ねたワンマン多重録音によるコンテンポラリー・ジャズ寄りの作風。A5 "Cud" や B3 "Vedersi Passare Le Cose Attorno" で主調となっているシンセのやわからな音色と、地中海の土着の薫りを微かに漂わせながら伸びやかに振る舞うサックスとのハーモニー。その淡い光の中に彼の心象風景がうっすらと浮かび上がるような、ナチュラルで牧歌的なサウンドに特に惹かれます。リリース元はGebbiaのプライベート・レーベルSound Event。


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