2017年8月28日月曜日

[146] Joseph Shabason - Aytche


Label: Western Vinyl

Catalog#: WV165
Format: Vinyl, LP, Album
Country: US
Released: 2017
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A1 Looking Forward to Something, Dude 4:01

A2 Aytche 3:48
A3 Neil McCauley 5:15
A4 Smokestack 4:12
B1 Tite Cycle 5:20
B2 Long Swim 4:54
B3 Westmeath 4:56
B4 Chopping Wood 4:01
B5 Belching Smoke 4:14

「Passive Aggressive」「Indigo」に続く、現行アンビエント・サウンドとジャズの美しい交点。米Western Vinylから8月25日にリリースされた、トロント在住のサックス奏者Joseph Shabason(ジョセフ・シャバソン)のデビューアルバム。


Saxophonist and composer Joseph Shabason's debut Aytche builds a bridge off of the precipice his forbears established, skirting jazz, ambient, and even new age with the same deliberate genre-ambiguity that made their work so interesting. Aytche is a document of exploration both inward and outward. Every step taken in sound-design mirrors a stride in emotionality, as Shabason employs a variety of effect pedals to coax rich moody textures from his instrument. He explains, "I feel like robbing the sax of the ability to shred by effecting it and turning it into a dense chordal instrument really helps the instrument become something that it's not usually known for." Aytche deals with themes of degenerative illness and assisted suicide with eloquence that instrumental music rarely achieves regarding any subject, much less such difficult ones. Album highlight "Westmeath" approaches Aytche's subject of inspiration head-on. Here, the album's only verbalization appears in the form of an interview with a man discussing his father's trauma and eventual suicide after surviving the holocaust. Though we only hear a few obscured words and phrases from the interview, the impact is powerful. For Shabason, whose grandparents survived the holocaust, this selection is anything but frivolous.


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2017年8月23日水曜日

[145] Asuna - Mille Drops


Label: RÉCIT

Catalog#: recit13
Format: CD, Album
Country: France
Released: 2017
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1 Mille Drops 17:00

2 Water Rings Spreading In Kizaki Lake 10:18
3 Two Ways On Way Back In The Rain 6:42

アンビエント、ドローン、様々な楽器を使用したインディー・ポップから実験音響まで、ジャンルを横断しながらも一貫した音楽性を保ち、国内外を問わずリリース/ライブなど多岐に渡る活動を続ける、Asuna。彼の新作「Mille Drops」が、パリを拠点とするレーベルRÉCIT(レシ)から発表される。今作は、「水や雨、水滴、波紋」などをテーマに制作された、繊細な響きを持ったアンビエント/音響実験作品となっている。 //

Morton Feldmanは、絵画と音作品における「表面」を考察する中で、音楽には大別して2種類あると考えた。すなわち、時間軸に「潜り込ん」でリズミックな構成に留まるもの。そして時間と「溶け合」って、これと一体化するものである。Asunaが新境地を見せる今作は、間違いなく後者に属するものだろう。ここでのAsunaはまるで、様々な時間軸に潜り込んだ音たちをどこかに隠し貯めておいて、それらを録音時間という便宜的な枠の中に、屈託のない所作で一気に撒き散らしたかの様である。ここで私たちが出会うもの、それは、本人が制作の過程で自覚していたように、持続化された音 - ドローンによって無化された(ように思われる)時間 - ではなく、その瞬間にまさにそこにある音である。この刹那的な音たちは、どこにでも弾け飛んで行ってしまいそうで、油断ができない。しかしその一回性を受け入れるのならば、聴取者はいつまでもそこで戯れていられるような、非直線的な音響体験の広がりに包まれるだろう。この感覚はとても豊かで、スリリンングなものである。

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2017年8月20日日曜日

[144.1] fleaongak

2008年から新潟市でゆっくり続けているfleaongakというライブシリーズとして、この8月と9月に2つの演奏会を企画いたしました。ひとつは東京のアート・フェスティバル「INFRA 2017」(8/19-26)のためにフランスから来日されるTomoko Sauvage(トモコ・ソヴァージュ)さんのソロ公演。もうひとつは、打楽器奏者・松本一哉さんの新作リリースツアーの一環として、同じ打楽器奏者の齊藤功さんを共演に迎えたソロ・デュオ公演。どちらも市役所近くの医学町ビルにて開催します。

Tomoko Sauvageさんは、水や氷といった自然の素材を用いた録音作品やインスタレーション作品を発表しているパリ在住の音楽家。ライブ・パフォーマンスでは南インドの伝統楽器・ジャラタランガムからヒントを得た「Waterbowls」という独自の楽器を演奏されます。ジャラタランガム(水の波)は水を入れた大小のお椀を竹の棒で叩くという珍しい楽器なのですが、水が主に音程を調節する役割であるのに対して、トモコさんの「Waterbowls」ではハイロドフォンとエレクトロニクスを使い、水そのものの多様な音色や繊細な質感を抽き出して、それを音楽として奏でます。

松本一哉さんは、波紋音・音のかけら・陶琴壺・三昧琴といった音具や自然物を操る打楽器奏者。彫刻家や鍛冶師によって造られたそれらの音具は、音もさることながら、造形として美しいです。ミニマル・ミュージックの名門Spekkよりリリースされた新作「落ちる散る満ちる」は、鍾乳洞の天井から無数に落ちる滴の下に、鉄琴の音板を一枚一枚配置し、滴のリズムとともにその場の空気を採録した作品。キンキンという金属音が1つ2つ・・と増え、次第に洞窟内のひたひたという気配の中に音楽の原初ともいえるような響きを満たしていきます。haruka nakamura Piano Ensembleのドラマーとして長年活動してきた齊藤功さんを迎えた今回の新潟公演では、その新作にあわせたライブセットになります。

思いがけず「水」という共通点をもつ2つの演奏会が続きます。演奏者の動作や楽器から音をみることは楽しく、たとえ音が複雑であったとしてもその楽しみ方はとてもシンプルだと思います。お時間がありましたら、ぜひ聴きにいらしてください。ただいまご予約を受付しています。

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Tomoko Sauvage
「水と磁器の演奏会」
2017年8月25日(金) 午後6時30分より

松本一哉+齊藤功
「ふたりの打楽器奏者による演奏会」
2017年9月2日(土) 午後6時00分より

会場:医学町ビル 201号室(新潟市中央区医学町通1番町41)
※学生は入場無料です。


2017年8月16日水曜日

[144] Gilroy Mere - The Green Line


Label: Clay Pipe Music

Catalog#: pipe 016
Format: Vinyl, LP, Album
Country: UK
Released: 2017
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イースト・サセックスに構えた自宅スタジオを拠点に活動する音楽家Dollboy aka Oliver Cherer(オリバー・チェラー)の別名儀Gilroy Mere(ギルロイ・メア)による新作が、ロンドンのスモールプレス・レーベルClay Pipe Musicよりアナウンス。1930年代から80年代中頃まで、ロンドン中心部と郊外の田園地帯を結ぶ交通手段として住民に親しまれた緑色のバス「グリーンライン」へのオマージュを込めて制作された、追憶と空想の旅のためのサウンドトラック。リリース日は9月15日予定。


南ロンドンの郊外で幼少期を過ごした私は、赤いバスが街に入り、緑色のバスが出て行くのを見ていた。グリーンラインはロンドン住人をケントやサセックスやボックスヒルへと運んだ。私の道は街と田園の境界線のようだった。全て赤レンガのチューダー様式か1930年代のモダン様式で造られたデタッチド・ハウス(一戸建住宅)とセミデタッチド・ハウス(二戸建住宅)が、終わりのない夏の日、私が乗るバスの通りすがりにちらっと見えた。その家々には屋号が付けられていた。ウィンドワード、フェアアイル、ハイ・ツリーズ、ダンロアミン、シェ・ヌー、ウッドランズ、ヒルクレスト、ヒルサイド、ザ・ローレルズ、サニーサイド、ザ・ビーチーズ、スプリングフィールド、フェアビュー、ウェイサイド、オークランド、ツリートップス、ローズ・バワー、ザ・オールド・スクール・ハウス…… この「グリーンライン」は、緑色の1・2建てバスに乗った、幼少期の旅の思い出として書かれている。ジャンクショップ、チャリティーショップ、カーブートショップで我慢できずに手にして、生涯にわたって貯まっていった楽器や古い電子機器を使い、サセックスの自宅スタジオで録音した。これら楽曲は、ひとりのイギリス人少年が郊外の自宅へ向かう旅途の風景・音・停留所を表し、全ての楽曲でひとつの旅として考えられている。ロンドンの郊外から、海が見えるウィールドやダウンズへ。ロンドンバス博物館で現在保存されている実際のバスRLH48を経由して、苔で覆われたベンチと古びたイチイが立つ教会墓地がある名のない村の緑へ。バスは家へ向かって進む。 - オリバー・チェラー


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2017年8月11日金曜日

[143] James Maloney - Gaslight


Label: Moderna Records
Catalog#: MR013
Format: CD, Album
Country: Canada
Released: 2017
DISCOGS

1 Seascape 2:34

2 Blink 5:40
3 Gaslight 3:26
4 Intertwine 4:01
5 Lament 2:58
6 Gambetta 3:04
7 Afterglow 3:35
8 Full Colour 2:01
9 Rise Slowly 2:09
10 Angel Wings 5:07

James Maloney(ジェイムズ・マロニー)はオックスフォード大学で音楽を学び、2011年に卒業した後、ミニマル・コンポジションとソングライティングに進むべき道を見出だし、それが「Gaslight」のサウンドとスタイルに繋がりました。このアルバムは、古いピアノを中心に、トランペット、ヴィブラフォン、グロッケンシュピール、微細なエレクトロニクスによって構成された活力に満ちた作品集です。ミニマリストの領域へ踏み入れる彼の輝かしいデビュー作は、シネマティックなオーケストレーション、ポストロック、メロウジャズ、モダンクラシカルからの影響が巧みに織り込まれ、広々とした雰囲気と、鮮やかな音色と心地よい和音、丹念に作り込まれた冒険的な音世界によって特徴付けられています。


James Maloney (b.1989) is a composer and producer based in London. He releases solo work, and writes music for film and theatre. In his solo work, he experiments with old instruments, and electronics.  On July 7th 2017 he is releasing his debut solo album, Gaslight, on Moderna Records - it's a minimalist, instrumental record, made with old instruments recorded very late at night. He's currently the Music Associate at Shakespeare's Globe Theatre, where he's to compose the score to Much Ado About Nothing, directed by Matthew Dunster, in summer 2017.  His work in film includes music for Open Palm Films, Shape History, Major Tom Productions, and others. He's originally from Birmingham and studied music at Oxford University, where he graduated with first class honours in 2011.


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2017年8月10日木曜日

[142] Albert Falzon - Kumbha Mela



「Morning Of The Earth」「Crystal Voyager」などのサーフフィルムで知られるオーストラリアの映画監督Albert Falzon(アルバート・ファルゾン)が、80年代初頭のインドで、ヒンドゥー教最大の沐浴祭クンブメーラをはじめとする宗教行事を巡り、カシミールの灌漑水路をボードで辿る旅の風景を映像化した「Kumbha Mela」より、カシミールのパートを抜粋したVHS作品「Same As It Ever Was」(Hendring, 1987)。サウンドトラックは、Brian Eno & Harold Budd「The Plateaux Mirror」「The Pearl」と、Brian Eno「On Land」から選曲。現実と幻想を媒介する鏡面界のエキゾチズム(楽園思想から隔絶した無宗教的世界の漂泊感覚)を醸し出すEnoとBuddの音楽と、水辺の風景のスローモーション映像がよくあっていて、Eno本人も「これ以上自分の音楽にふさわしい映画はほかに見たことがない」と賛辞を呈したとのこと。


2017年8月8日火曜日

[141] After The Flood - After The Flood 2


Label: æ

Catalog#: æ6
Format: CD, Album
Country: US
Released: 1998
DISCOGS

1-1 Herald 6:40

1-2 Touching Still 5:04
1-3 Misdeem 5:03
1-4 Mother Resounded 2:45
1-5 Hand In Hand 3:59
1-6 Perhaps Good, Not Understood 4:45
1-7 To See You Fall 5:16
1-8 Just As Well 6:12
1-9 Follow Sun Ra 4:56
1-10 Beyond The Latter 4:02
2-1 So Near, So Far 6:16
2-2 Fecund Now 3:32
2-3 Inch Meal 5:19
2-4 We Believe You 3:17
2-5 Left Of Wane 6:09
2-6 Mire Image 2:54
2-7 Lo, Artemis 4:35
2-8 So Inscribed, The Changing Story 5:26
2-9 Amethyst 12:07
2-10 Constellated And Consummated, Then 3:46

環境音やファウンドサウンドにフォーカスした00年代以降の実験音響〜フォノグラフィ・シーンの中核的人物の一人、シアトル在住のサウンド・アーティスト兼グラフィック・デザイナーDale Lloyd(デイル・ロイド)が、and/OAR設立以前に運営していたレーベル æ から1998年に発表したAfter The Floodのセカンドアルバム。ロイドを中心としたこのATFは、彼の友人の音楽家らによる不定形の地下レコーディング・プロジェクトとして89年にスタート。91年にCaroline Davenportとの共同レーベルMannaからセルフタイトルのカセットテープを発表。そのリミックスCDの再リリースを経て、96年から再びレコーディングに着手した本作には、Cindytalk、Bowery Electric、Windy & Carl、Labradford、His Name Is Aliveといった英米インディの錚々たる面々がゲスト参加。ロイドのロック方面のバックグラウンドや当時の多角的な人脈から生まれたコラボレイティヴ・ワークの集大成にして、トリップホップ〜スペースロック通過後の米版「This Mortal Coil」とも言うべき趣向をもつアルバムであり、曲単位ではゲスト毎にアプローチを変えつつも、全編にわたりダウナーでミステリアスな空気に統一された陶酔的アブストラクト・サウンドが展開されています。


After the Flood was a recording project that featured an ever-changing rotation of contributors centering around producer Dale Lloyd. ATF informally began in 1989 as a series of basement recordings made between Lloyd and friends. ATF's self titled debut was later released on cassette in 1991 on Manna, a recording label founded by Caroline Davenport and Dale Lloyd which operated from 1990 to 1992. The first ATF release featured contributions from members of My Diva, Sage, Sky Cries Mary, The Blackouts, Biota, Forever And A Day, Agra Mecca, Control Freak, Maxine, Vertigo Bus, and Sound Color. In 1993, Clark Von Trotha and Lloyd formed the æ label and in 1995 the first ATF release was reissued, remixed and remastered on CD with newly recorded tracks replacing some of the original ones. Following the success and warm reception of the first release, in 1996 work began on a second ATF entitled "After The Flood 2" which  featured ontributions from members of Cindytalk, Bowery Electric, Windy & Carl, Labradford, Climax Golden Twins, Lucid, My Diva, and artists Cyndia Pickering who (later changed her name to Sylvi Alli), Marc Olsen (Sage, Sky Cries Mary), Warren Defever (His Name Is Alive), Mark Holt (later changed name to Mark Wand - Sound Color, Trick Deck), Maxine and Steve Ball (League Of Crafty Guitarists).


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